無料でもいらない不動産の理由~家いちばを見る前に~

無料の家
「家いちば」って知ってますか。
個人があげたい&売りたい不動産を掲載できる掲示板です。

けっこうとんでもない物件が多く掲載されていて、
プロの不動産市場が介入しない(売買の際には介入するのか?)混沌としたヤフオク的好き勝手な値段が飛び交う面白いサイトです。

実際に価値の無い物件を役立ててもらおうとする人や、何とかうまいこと言って他人にもらって欲しい人、相場以上に儲けてやろうとする人など、
いろんな希望や欲望があふれていて面白いので、時々チェックしてます。

その家いちばをチェックしたら、見覚えのある家がありました。。。
「まだもらい手見つかってなかったのか~」

思い出のタダ家

あれは2015年の10月だったから、もう3年くらい前の話。
このブログをなんとなく作ったきっかけになった出来事だったのかもしれません。
実際にそうだったかはもう忘れてしまいましたが。

当時はとにかく移住というか土の少しある生活がしたかったけれど、
貧乏な現実があったから(今も全く変わっていないが)、
趣味で勉強した宅建(当時は宅地建物取引主任者)の知識で理解しやすくなった物件情報を見まくる生活をしていました。

今は移住ブームや小屋ブーム・田舎暮らしブームやDIYブームが怒涛のように押し寄せて、
激安不動産たちにも小さなバブルが起きていますが、ほんの数年前は儲けにならないからほとんど掲載されてはいないものの、
市場に出ない「価値の無い」物件は、探す労力は掛かるけれど、ちょっとした現金を持っている人なら簡単に手に入れられていたと思います。

情報も、ネットで見られる範囲だと、知っている限りではジモティーくらいだったと思う。
で、見つけたのがこの物件でした。

無料で土地建物あげますと言われたけれど


場所は岡山県瀬戸内市長船町。祖父母が住んでいたのが瀬戸内海沿岸ということもあって、引っ越しを視野に問い合わせをしてみました。
良さそうなら、とりあえず高速バスで行ってみようかと思って。

問い合わせにはすぐ丁寧な返信があって、画像を送ってもらったり詳しい情報を聞いたりと何度かやりとり。
当時きいた固定資産税は土地・田も含めて22,300円、今の掲載情報では18,441円。
母屋+母屋の横の小さな家(トイレと五右衛門風呂)水道は井戸。そして土蔵と山林・水田。

「5年前、田の一部を譲渡したときは1平方メートル9000円強でした。
それを考えれば、1反強が無償ですから、整地の手間に十分報いるものと確信しています。」
というメッセージをもらいました。

更地にして使うというつもりはまたくなかったから、家の写真を見て断念。
今掲載されている写真とは違った(こんな詳細は分からなかったしガラスもかなり残っていたと思う)けれど、
その時の感覚では、屋根が・・・というのを強く感じたのを覚えている。(屋根は金がかかる。平屋ならともかく)
やはり、家は人が住まなくなると急激に劣化していくし、23年間(当時)という空き家期間は、プロならともかく自分がどうにかできるレベルではない廃墟でした。

現在掲載されている情報


昭和2年築の古家と蔵があります。
40年前までは親族が、電気以外は自給自足で生活しておりました。

相続して20年以上放置しております。古家は住めないと思いますので、
解体費用を考慮して無償で譲渡いたします。時期はいつでも可能です。

蔵はもしかしたら、修復可能かもしれません。

ただ、釘を使っていない昔の工法の家なので解体はしやすいのではないでしょうか。
また、解体後の木材は再利用可能かと思います。土地が広いのがウリです。

保育園、小、中学校が徒歩圏内です。ご希望であれば、畑と田をお貸しできます。

星がきれいに見えます。
古家がついているので、解体する必要があります。

また、宅地の土質は、備前焼向けのものです。
宅地の土を使って陶芸も可能です。

ガスはプロパンガスです。
畑は登記上は山林扱い、別途水田、1263平方メートルは農地法適用です。

そして、固定資産税は、18,441円(住宅用地の特例適用中)です。


【物件概要】※古屋付土地(現状渡し)となります

場所:岡山県瀬戸内市長船町

土地:宅地 451.97㎡

建物:古家

希望価格:(諸費用のみ)
http://www.ieichiba.com/single-post/18042501%E7%80%AC%E6%88%B8%E5%86%85

クラウドファンディングで資金集めて。とかアクティブな人ならできるかもしれない。
古材を業者に引き取ってもらう事で解体費用の軽減も少しは可能かもしれないし。
活用できる方、ぜひもらってあげてください。

無料でも家をあげたい理由

そもそも、なんで土地建物を無料で赤の他人にあげたいと思います?
タダより高い物はないって言いますよね。

土地建物は、普通なら(と言ってもほんの数十年前に作られた普通ですが)長いローンを組んで、一生の大半を掛けて手に入れる高額品の花形です。

それを無料でいいからもらって欲しいという人が出る時代になってきている訳ですが、
それで少しでも儲かるのなら、いやプラマイ0にでもなるなら、とっくに持ち主がやってますから。

不動産は買ったら自分の物?

所有というのは【使用・収益・処分】が自由にできるという事を差します。

買ったりもらったりしたものは自分の所有物になるわけなので、どうしようと自分の勝手です。
買った本は、使っても、貸しても、処分だって自由です。

不動産も基本的には同じですが、1点だけ大きく違うところがあります。
分かりますか?

自分で住んでも、人に貸して収益を上げても、売却するのだって自由ですよね?
でも、捨てることだけは出来ないんですよ。一部の例外を除いては。。。

ここ、とっても重要です。

そしてもう一つ、別の角度から見ても不動産は所有者の物なのか、疑問な点があります。
それは税金です。

持っているだけで子々孫々まで掛かる呪い

ご存知だと思いますが、中国は土地の個人所有が出来ません。
国から土地を借りて家を建てます。

そのことで、中国人の知り合いの方から「日本は土地が買えるからいいですよね」って言われたことがあります。
でもそこで、大きな?が頭に浮かびました。

賃料払ってるのと、固定資産税払ってるのって何が違うの?
もちろん、安心感は違うのかもしれません。

でも、住んでなくても使ってなくても行ったことすら無くても、
毎年毎年、未来永劫、子々孫々まで、毎年固定資産税の支払いが必要になる訳で・・・
都会なら都市計画税も掛かる訳で・・・

これってすんごく怖くないですか?

余談ですが、中国人の感覚だとマンションとかの「管理費」が住んでいない時にも掛かるのは理解できないらしい。
言われてみると確かに!って思いました。

家が無ければ税金6倍。あっても・・・

最近、時々ニュースになりますよね。
持ち主不明(不明じゃない場合も多いけれど)家屋の廃墟化と倒壊。そして行政の取り壊し。

そもそも、土地の価値は更地が一番高いんです。
古家が建っている土地の売却を不動産屋さんに相談すると、更地ならということもあると思います。
更地にする金額(解体費)>売却価格だと、売れても赤字なので0円という場合もありますよね。
→自分の家の解体費を見積もってみる
これも新築信仰のちょっと古い感覚なのかもしれないですけどね。

そして、税金も更地が一番高いんです。
そこに建物を建てれば(200㎡までの土地がどうのこうのとか細かいことはあるけれど)、一気に土地の固定資産税は6分の1に軽減されます。

これが、廃屋が残る大きな理由の一つの理由になっている訳ですが、
所有する建物が処分できない(不動産価値が解体費用を下回る場合が多い)、
不動産屋さんが取り扱ってくれない家を持っていると、
・建物を壊すと税金が上がるから壊せない。
・そうしているうちに建物老朽化
・もう行く気もしない→劣化が急激に進行
・倒壊
と進んでいきます。

ここで問題になるのは「倒壊した場合に近隣への被害が発生した時の不安」です。
申し訳ないという気持ち的なこともあるでしょうが、その倒壊で物的・人的損害が発生してしまった時の法的処分や費用は相当な負担があると思います。

かといって捨てることもできない。
早く手放して楽になりたい!

これらが縁故を除く無料物件が存在する最大の理由だという事を理解しておく必要があります。
その重責を所有者に代わって背負う勇気・覚悟がありますか?

家いちばの面白いところは、激安で買ってはみたものの手におえず、かと言って損はしたくないという人たちの物件が色々とみられるところです。
激安ボロ物件で一儲けを企んであえなく玉砕した物件とか、民泊失敗や新法の施行前に売り抜けたい人とか。

前に紹介したこの物件(もらってくれたら50万円あげます物件)はもらいたい人が沢山出てきて、結局数十万円で(確か50万円位)で売却。という事になったらしいけど。この場合、50万円あげます話はどうなったんだろ?贈与税対策で50万円で購入したことにして、後で50万円もらって相殺したのかな?

不動産に掘り出し物は無い

余談ですが、宅建の勉強をしているときは、市販のテキストだけで勉強していたのですが、その本には素晴らしい音声講座が付いていて、全くの素人を見事に一発合格させてくれました。
宅建ダイナマイトの大澤センセにはとてもとても感謝しています。

自分がラジオ好きということもあってか、このセンセの下ネタ気味の軽快トークはとにかくよかった~
紹介することで少しでも恩返しになっていれば嬉しいです。
しかも、何故か当時より安いし・・・

¥5,610 (2020/03/20 12:05:38時点 Amazon調べ-詳細)

で、この大澤センセが言っていて今も心に強く残っているのが、
「不動産に掘り出し物は無い!絶対何かある。何かあるよ」という言葉。

その理由は様々あると思いますが、
例えば、離婚が原因の場合なんかも安くなりがち。
とにかく早く家を処分してしまいたいから、ちょっとくらい安くても早く売れればOK!みたいな。
縁起の悪い家かもしれないけど、それを気にしなければ問題無し。
逆に気にする人は絶対買いたくないはず。

とにかく理由が何かを知ることが大切だと思います。
もし、その理由が自分にとって致命的な場合、大きな負を背負ってしまう事になるわけですから。

不動産は壮大な時間をかけて行われているババ抜きと思った方がいいですね。
もう国内人口が増えることは無いと思いますし。
最後にババを持っている人は負けなんです。

無料でもその家がいらない理由

無料で土地や建物を譲りたい。もらって欲しい!
っていう物件があってもいらない理由を〈あくまでも現時点での個人的な意見として〉簡単にまとめておきます。

・未来永劫掛かる税金

そんな場所の固定資産税はそれほど高くはないはず。でも、タダではない。
次に売ること(タダでもらってくれる人)が絶望的であることを理解しておかないと、ババ抜きのババを引くのが自分という事になって、ちりも積もって子々孫々まで大きなマイナスを生む可能性がある。
本当に安い物件は「最終的に処分できる」物件だと思います。

・無料=0円ではない

実際無料だと贈与税とか発生して面倒な場合もあるし、登記の移転だけでも費用は掛かる(10~40万位かな)。
さらに、使えるようになるレベルまでリフォームしたら、もっといい場所に普通の中古の家が買えることも多いハズ。
自分でリフォームはそんなに難しくはないのかもしれないけれど、誰にでもできるわけでは決してない。

最後に、いる理由も一つだけ。
そこに「生涯」住みたいと思えるならもらってもいいかもしれません。

生涯引っ越しをしたいとも思わずに住み続けられる〈安住の地〉
そんな古家を探しています。

気になるものを適当に載せるコーナー

ちょっと気になる本