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自分用メモ~民泊解禁 どんなことに気をつけたらいい?~

民泊解禁 どんなことに気をつけたらいい? 2016年05月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

民泊サービスの広がり

 自宅やマンションの空き部屋などの一般住宅を、宿泊施設として貸し出し、旅行客を有料で泊める「民泊サービス」が広がりを見せ始めています。背景には、モノやサービスを個人間でやりとりしたり、共有したりする「シェアリングエコノミー」という新たなビジネスモデルの登場があります。その一つが、アメリカで08年に誕生した、Airbnbに代表される、自宅の空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す旅行者とを仲介するサービスです。

 これによって、ホテルや旅館ではなく「他人の家」に泊まるという、新しい選択肢が生まれました。質問者も指摘しているように、部屋を提供する側は空いている部屋を有効活用できます。一方、旅行者の側には宿泊料を安く抑えられ、その国の地元の人々の暮らしを体験できるというメリットがあります。

 シェアリングエコノミーの広がりとそこに潜む問題点については、「民泊ビジネスの是非 ネットの新事業で失敗しない法律武装とは?」(15年8月26日掲載)において、エアビーアンドビーだけでなく、タクシーやハイヤーの配車サービスとして知られるUber(ウーバー)も取りあげて解説しています。興味がある方はそちらも参考にしてください。

 当時は、エアビーアンドビーもウーバーも、法律の問題もあって、普及するのは当分、難しいだろうと思われていました。ウーバーがタクシー事業者などの根強い抵抗に遭い、いまだに苦戦しているのに対して、エアビーアンドビーが実施している民泊は、着実な広がりを見せています。類似のサービスを行う企業は次々と登場しており、戸数の絶対数が多い東京だけではなく、全国で民泊ビジネスが注目され、民泊専用に部屋を購入・貸借する例も出てきているようです。

 他方、法制度の整備が追いつかない状況下で、許可などを受けないまま民泊を営業しているケースが多く見受けられ、問題となっています。例えば、京都市が行った調査によれば、インターネット上に公開されている市内2702の民泊施設について、その施設の情報と京都市が管理する旅館業の登録情報を照合したところ、少なくとも68.4%が無許可だったとのことです。
訪日客増で規制緩和へ

 日本政府観光局(JNTO)の統計によると、15年の訪日外国人観光客数は、前年比47%増の1973万人に上り、東京五輪・パラリンピックが開催される20年の達成を目指していた「年間2000万人」に迫りました。13年には1036万人だったので、2年間で訪日客は2倍近くに伸びたことになります。円安基調やビザの発給要件緩和、免税制度の拡充などが奏功し、中国人を中心に訪日客が急増したのが要因と考えられています。

 ここで課題となってくるのが受け入れ態勢の整備です。観光庁の宿泊旅行統計調査(速報値)によれば、15年の宿泊施設の客室稼働率は国内全体では60.5%ですが、大阪府の85.2%を筆頭に、東京都82.3%、京都府71.4%となっています。これらの地域では週末となればほとんど部屋を取れない状況です。ビジネスマンが出張に使うホテルも、外国人観光客に埋め尽くされており、「ホテルの予約が取れない」「宿泊費が高くて会社の旅費規定をオーバーしてしまう」といった悲鳴も聞こえてきます。

 先日、私のクライアント企業の社員の方と話をしていたら、「大阪に出張し、打ち合わせ終了後、現地の社員の方々と懇親会をしている最中に、電話で宿を取ろうとしたが、どこからも断られた。懇親会の後半は、参加者全員で手分けして空いているホテル探しをした」という、ほとんど冗談とも言えるような出来事を説明してくれました(結局、その人は、唯一空いていた、割高なスイートルームに宿泊したということです)。

 東京オリンピックを控え、インバウンド市場の拡大は今後も続くと見込まれています。政府は今年3月、訪日外国人数を20年に現在の2倍の4000万人、30年には3倍の6000万人にまで増やすとの新たな目標を決めました。そんな中、宿泊施設不足の打開策として期待されているのが民泊サービスです。

 楽天をはじめとするインターネット関連の企業群が参加する「新経済連盟」は、15年10月、「シェアリングエコノミー活性化に必要な法的措置に係る具体的提案」を発表しました。民泊解禁による訪日客の増加により、インバウンド消費を含む経済効果は10兆円台、受け入れ可能な外国人旅行者数は約2500万人に上ると試算し、民泊推進が、「『戦後最大の経済、GDP600兆円』の実現」に貢献するとしています。そして、政府も、特区の設置や政令改正、さらには法改正で規制緩和をすすめ、民泊の普及を後押ししています。

 政府が進めている規制緩和の内容については後ほど説明するとして、まずは、このような新しいビジネスに立ちはだかる「業法」である旅館業法において、民泊がどのように扱われるのかについて述べたいと思います。先に取りあげた「民泊ビジネスの是非 ネットの新事業で失敗しない法律武装とは?」の内容と一部重複しますが、以下確認したいと思います。

旅館業法の適用基準

 旅館業法では、旅館業には「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業)が該当すると規定されています。そして、この旅館業を行う場合は、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市区長)の許可を受けなければならないと規定されています。

 また、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」と規定されています。たとえば、友達をただで泊めてあげる、といったことなら「旅館業」にはなりませんが、有料で(=宿泊料を受けて)、社会性を持って継続反復している(=営業)、つまり繰り返しビジネスとして運営する場合には、許可が必要になるわけです。

 仮に宿泊料を、体験料、室内清掃費などの名目で徴収したとしても、実質的に部屋の使用料とみなされるものは「宿泊料」にあたります。社会性の有無は、「不特定多数」を宿泊させる、広く一般に宿泊者を募集しているなどの事情で判断されます。また、「土日限定」「夏季限定」などとして宿泊サービスを提供しても、継続性があるとみなされます。

 ただし、厚生労働省の通達では「年1回(2~3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの」は、「イベント民泊」とされ、旅館業法の適用は受けずに住宅を貸し出すことができます。また、農林漁業者の運営する施設に宿泊する「農家民泊」については、旅館業法の適用は受けるものの、面積基準の要件が緩和され、後述する建築基準法や消防法でも特例扱いがなされています。

 旅館業がアパートなどの貸室業と違う点は、(1)施設の「衛生上の維持管理責任」が営業者にある(2)宿泊者が「生活の本拠」を有さないこと――と示されています。ここでいう「生活の本拠」の判断目安は1か月とされているため、ウィークリーマンションは旅館業にあたりますが、マンスリーマンションやサービスアパートメントなどは貸室業となり、旅館業法の対象外となっています。

 なお、旅館業の許可は、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の四つに分類されています。そして、それぞれのカテゴリーごとに、客室の床面積、客室数、玄関帳場(フロント設備)など、施設の満たすべき基準が旅館業法施行令や各地域の条例によって細かく定められています。この許可を受けずに行った場合は、「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する」とされています。

 実際に、こうした無許可の民泊の摘発が近年相次いでおり、14年5月に東京都足立区で自宅の一部を旅行客に提供していた英国籍の男性が旅館業法違反の疑いで逮捕されたほか、15年12月には京都で、16年4月には大阪で、摘発事例が出ています。

 また、宿泊者がゴミ出しや騒音などを巡り、近隣住民とトラブルになるケースや、知らない人が出入りすることで、マンション内のセキュリティーに不安を覚える住民も出てきました。各地のマンションで、管理規約に民泊を禁止する条文を盛り込む動きが出てきたほか、売り出し当初から、民泊を禁止する規定を盛り込んだ新築分譲マンションも現れ、顧客からの中には「安心できる」と肯定的に評価する人もいるようです。

 他にも、無許可民泊を野放しにしておくと、不十分な衛生管理による感染症のリスク、防火対策の不徹底による火災の危険性、テロや薬物犯罪などの拠点に悪用されるなどといった懸念もあります。

 こうしたことから、まさに今、早急な民泊のルール作りの必要性が主張されているわけです。

「簡易宿所」の面積基準緩和

 観光庁と厚生労働省は15年11月、民泊の新たなルールを策定するための有識者検討会「民泊サービスのあり方に関する検討会」を設置し、議論を続けてきました。今年3月に示された「中間整理」では、違法な民泊サービスの広がりに早急に対応するため、「当面、『民泊サービス』について、簡易宿所の枠組みを活用し、旅館業法の許可取得を促進する」という考えが打ち出されました。それを受けて4月には、旅館業法施行令が改正され、旅館業法の許可を取りやすくするため、簡易宿所の満たすべき基準が緩和されました。

 「簡易宿所」にはカプセルホテル、ユースホステルやゲストハウスのドミトリーなどがありましたが、ここに民泊も含まれる、としたわけです。そして、これまでは一律に33平方メートル以上としてきた面積基準を、「宿泊者が10人未満の場合は、1人当たり面積3.3平方メートル」と緩和しました。例えば、定員が3人なら9.9平方メートルあれば条件がクリアできるようになったわけです。

 また、従来、厚労省から各自治体への通知という形で簡易宿所にもフロントの設置を求めていたため、それに応じて多くの自治体が条例でフロントの設置を義務付けていました。今回、宿泊者が10人未満の小規模な施設に関しては、フロントの設置を要しない旨の通知改正が行われました。これらの基準緩和により、ワンルームマンションでも、民泊を営業することが可能となったのです。

建築基準法と消防法が壁に

 ただし、こうした基準が緩和されても、実際に民泊サービスを行う場合には、さらなる大きな壁が立ちはだかっています。宿泊施設には、建築基準法と消防法で一般住宅とは異なる特別な規制が課せられるためです。

 建物は建築する際、どういった用途の建物かを行政に申告しなければなりません。一般的には、一軒家やマンションは、居住目的で建築されていますので、「住宅、共同住宅」という用途になりますが、民泊施設として利用する場合は、「ホテル、旅館」という用途になります。そして、民泊施設が100平方メートル以下の場合には、用途変更の確認申請を出さなくてよいことになっています。もちろん、民泊の場合は、これがあてはまるケースが多いと考えられますが、その場合でも、確認申請を出さなくてよいだけで、建築基準法は守らなければなりません。

 そこで問題となってくるのが「用途地域」です。都市計画法では、住宅地、商業地、工業地など12の地域に区分してそれぞれの土地に建てられる建物の種類を決めています。「住宅、共同住宅」は工業専用地域以外の11地域に建築可能です。一方、「ホテル、旅館」は第一種住居地域から準工業地域の6地域にしか建てることができません。そのため、民泊を始めようと思っている建物の場所が「ホテル、旅館」の用途利用ができる地域になければ、そもそも民泊を行うことはできないことになります。

 消防法の問題もあります。マンションの一部で民泊を行う場合は、建物全体の面積と民泊部分の面積によって、必要となる消防設備が異なってきます。建物の延べ床面積が500平方メートル以上であれば、ホテルや旅館と同じように自動火災報知機を設置する義務があり、すでに設置されているはずなので、問題ありません。300平方メートル未満の場合は、民泊部分のみに自動火災報知機を設置することでクリアできます。

 やっかいなのは、床面積が300平方メートル以上500平方メートル未満の物件です。民泊部分の面積が1割を超えていなければ、民泊部分と管理人室等のみに自動火災報知機を設置すれば済みますが、1割を超える場合には、マンション内のすべての部屋に自動火災報知機を設置しなければなりません。そうなった場合、現実的には、そのマンションでの民泊サービスは困難です。また、廊下や階段等の共有部分に、新たに誘導灯を設置する必要もあります。カーテンやじゅうたんは防災表示がされているものを使わなければなりません。これらの条件をクリアするためには、かなりのコストと手間がかかります。

マンションの管理規約も

 一軒家ではなく、賃貸マンションの1室を貸し出す場合には、賃貸借契約やマンションの管理規約上の問題が生じる可能性もあります。ほとんどの賃貸借契約では、大家さんの承諾を得ないで物件を誰かに又貸しすること(転貸)は禁止されています。そして、無断で転貸した場合に賃貸借契約を直ちに解除できるとされているのが一般的です。つまり、部屋の立ち退きを余儀なくされるのみならず、最悪の場合は損害賠償請求を受ける可能性もあります。

 マンション管理規約では、通常、マンションの各部屋を「専ら住宅として」使用しなければならないとされています。その判断は、生活の本拠があるかどうかによってなされるため、民泊専用の物件として使用している場合は、管理規約違反とされる可能性があります。前述のように、法的に争いの余地がないように、近時は、都内の大規模マンションなどを中心として、管理規約で民泊利用を明確に禁止する規定を定める例も出てきました。

「特区民泊」がスタート

 そのような中、16年1月、東京都大田区で「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例」が施行され、国家戦略特区の規制緩和を活用した「民泊」が全国で初めてスタートしました。

 「特区民泊」は、外国人滞在客の拡大に対応するために、13年の国家戦略特区法(特区法)制定と同時に設けられた特例のルールです。特区法では、国が国家戦略特区として指定した区域内で、民泊に関する区域計画を策定し、その計画が内閣総理大臣に認められれば、区域内で都道府県知事や市長、区長の認定を受けると、旅館業の許可を得ずに民泊ビジネスが可能となることが定められています。建築基準法上も、「ホテル、旅館」扱いとはならず、「住宅」扱いとなります。

 制度が設けられて以降、なかなか条例を制定する自治体が現れませんでしたが、15年12月に大田区議会で条例が制定され、ようやくスタートしました。具体的な認定要件については、各自治体の条例や施行規則、ガイドラインによって定められています。

 以下は、大田区の主な認定要件です。

(1)建築基準法上「ホテル・旅館」が建築可能な用途地域
(2)滞在期間が6泊7日以上
(3)滞在者と賃貸借契約及びこれに付随する契約を結び、使用させる
(4)居室の要件
  ・一居室の床面積が25平方メートル以上
  ・出入り口と窓は、鍵をかけることができる
  ・居室と他の居室、廊下等との境は、壁造り
  ・適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有する
  ・台所、浴室、便所及び洗面設備を有する
  ・寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有する
  ・施設の使用の開始時に清潔な居室を提供する
  ・施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する

 民泊を始めるにあたっては、近隣住民にあらかじめ事業計画を周知しなければなりません。開始後は、近隣住民の苦情に対応する窓口を設置する必要もあります。また、行政は立ち入り調査の権限を持っています。旅券番号などを記載する滞在者名簿の作成を義務化し(名簿は3年以上の保管義務)、滞在者と対面するなどして本人確認を行う必要もあります。滞在者が出したごみは事業系ごみとして処理しなければなりません。

 大阪府議会、大阪市議会でも同様の条例が制定され、大阪府では4月から運用が始まりました。大阪市でも10月からスタートする予定です。大田区が3月までに実施した5回の説明会には計約1000人が参加するなど、関係者の関心は高いようです。その一方、実際に認定を受けた物件は開始から3か月の4月28日時点で12件35室にとどまっており、特区民泊が一気に拡大しそうな状況にはまだなっていないようです。
民泊参入への課題

 なぜ合法的な民泊への参入がそれほど拡大していないのでしょうか。一つは、最低滞在日数の制約です。特区法施行令は、民泊として部屋を貸し出す際には、「7日から10日」以上の最低滞在日数を設けるよう定めています。これは、既存のホテルや旅館との競合に配慮したものです。大田区、大阪府、大阪市のいずれも、条例で最も短い「7日」を選択しています。

 15年の観光庁の訪日外国人の消費動向調査によれば、観光・レジャーを目的とした訪日外国人の平均泊数は、ヨーロッパ出身者は10日以上となっている一方で、韓国人3.3泊、台湾出身者5.0泊、中国人5.9泊と、アジア出身者は短くなっています。東アジアからの訪日外国人が7割を占める中、「7日」という制約は、多くの観光客のニーズに対応できているとは言いがたい状況です。大阪府の松井一郎知事は、5月10日の国家戦略特区の会議で最低滞在日数を「6泊7日」から「2泊3日」に緩和するように要望しています。

 また、前述したように、消防法の課題もあります。消防法については、特区民泊でも基準を満たさなければならず、消防設備を整備するため多大なコストがかかるケースもあります。

 相談者のように、住んでいるマンションの一部屋を旅行客に貸し出すことで、国際交流ができ、ちょっとした副収入にもなるという感じで、民泊サービスを気軽に提供していけるような状況にはいまだなっていないわけです。

全面解禁に向け新法制定の動き

 こうした状況を踏まえて、さらなる規制緩和に向けた動きも出てきています。政府の規制改革会議は5月19日、「規制改革に関する第4次答申」をまとめました。

 答申は、「適切な規制の下でニーズに応えた民泊サービスが推進できるよう、類型別に規制体系を構築することとし、各種の『届け出』及び『登録』の所管行政庁についての決定を含め、早急に法整備に取り組む。この新たな枠組みで提供されるものは住宅を活用した宿泊サービスであり、ホテル・旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の法制度とする」として、民泊の全面解禁に向けた新法を今年度中に国会に提出するよう求めています。

 民泊は、現行法では旅館業法に基づく許可制となっていますが、答申では、届け出制の導入を提唱しています。これが実現すれば、インターネットを通じて、都道府県に必要な書類を届け出ることで、旅館業法上の許可を必要としなくなるため、マンションや戸建て住宅の所有者などが民泊サービスに参入することが容易になります。また、住居専用地域(住宅地)での民泊も認め、旅館業法上の施設に課されている「原則宿泊を拒否はできない」というルールも設けないことも盛り込まれました。

 一方で、ホテルや旅館に配慮し、民泊の営業日数の上限を「年180日以下」とする方向も打ち出しました。英国では年90日、オランダは年60日までに限っていることなどを参考に、今後、具体的に何日とするかが検討されることになります。また、住人や代理の「施設管理者」に、宿泊者名簿の作成、保存、衛生管理、近隣住民とのトラブル防止などを義務付けることも盛り込まれました。政府は答申に基づき、規制改革実施計画を5月末に閣議決定する見込みとなっています。

 前述した「民泊サービスのあり方に関する検討会」では、具体的な制度設計に向けての議論が進んでいます。年間の営業日数の制限のほか、1日あたりの宿泊人数、延べ床面積の制限、仲介業者に関する規制の導入のあり方などについて検討され、6月中をめどに最終的なとりまとめを予定しています。前述のように、特区での民泊が、宿泊日数の制限や消防法などの規制が厳しいため、あまり広がっていない現場を踏まえると、今後、合法的な民泊が普及するかどうかはこの議論の行方次第になりそうです。

民泊の広がりに期待

 相談者は、自宅の中の空いている部屋を活用して、民泊を始めたいとのことです。このいわゆる「ホームステイ型」の民泊についても、現行法では旅館業法の規制を受けるため、実際に始めるためのハードルはかなり高いと考えられます。ただ、今後整備される新たな法律の枠組みで、民泊が届け出制となれば、個人が、国際交流などの趣味を兼ねて、副業的に行うことも容易になりそうです。そういう意味では、今すぐ始めるよりも、ひとまず、もう少し議論の行方を見守るのがよろしいかと思います。

 これまで述べてきたように、現在の民泊は、合法的に行うためのハードルが高いため、違法状態で営業しているケースが多数を占め、放置されている状況です。旅館業法は、昭和20年代に制定されたため、情報通信技術の進展や、利用者のニーズの多様化などを想定しておらず、インターネットを使ったビジネスモデルとの乖離は大きくなっています。このまま法規制が民泊サービスに及ばない状況が続くと、衛生管理が行き届かずに感染症が広まったり、火災の原因になったりするなど、現在想定されている様々なリスクが顕在化してくる可能性もあります。その場合、宿泊者ばかりではなく、近隣の住民にも大きな被害が出る危険性をはらんでおり、早急なルール作りが求められています。

 欧米では、個人が自宅の一室に旅行客を泊める「ホームステイ型」の民泊が主流だといいます。相談者が、ニューヨークで出会った大家さんなどは、その典型だと思います。休眠資産の活用と、外国人との交流が主な目的です。こうした民泊サービスが広がれば、個人が資産を活用して収入を得るだけでなく、日本の観光にも新たな魅力が加わります。今後、民泊が普及していくことで、新たな旅行スタイルが生まれ、それによって、地域や経済が活性化することを期待したいところです。

2016年05月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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